アーサー王と円卓の騎士たち
不義の子だったアーサー
5世紀ごろ、イングランド王ウ-ゼルは、人妻イグレインに恋をした。そして、魔術師マーリンの力を借りて夫に化け、彼女とベッドをともにしたのである。イクレインは身ごもり、やがて男の子を出産した。アーサーと名づけられたこの不義の子はマーリンが預かり、後にエクター卿の子として育てられた。やがて王が亡くなり、イングランドでは後継者争いが起こった。
あるとき、カンタベリー寺院に剣が刺さった不思議な石が現れた。石にはこう書かれていた。
「この石から剣を抜いた者は、全イングランドの王である」
だが、多くの人々が抜こうとしても、剣はびくともしなかった。ところが偶然、石のそばを通りかかったアーサーが手をかけたところ、剣はあっさりと抜けてしまったのだ。これがアーサー愛用の名剣エクス力リバーである。
これを知った工クタI卿はアーサーに、彼が自分の子でないことを打ち明け、マーリンもまた、彼の実父がウーゼル王であることを明らかにする。
こうして弱冠15歳の少年王が誕生した。
彼の即位に反対する多くの諸侯が反乱を起こしたが、アーサーは忠実な諸侯らの協力とマーリンの助言によって、彼らを押さえ込んだ。
王座に就いたアーサ1は善政を敷き、イングランド王国には首都キャロットを中心に、平和なひとときが訪れたのだった。
あるとき、ふとしたことからエクスカリバーを折ってしまったアーサーは、マーリンに連れられ、ある湖を訪れた。
すると湖面から女性の腕が現れた。腕はひと振りの剣を握っていた。アーサーが新たに湖の音婦人から受けとった剣もまた、エクスカリバー。この剣の鞘を身につけているかぎり、持ち主は決して血を流さないという、魔力を帯びた剣であった。
不倫の恋と聖杯の探索
アーサーには、彼に忠実な多くの騎士たちがいた。彼の宮廷にあった円卓に、会議のときなどそれらの騎士たちが着座したことから、彼らは「円卓の騎士」と呼ばれた。魔力を秘めたこの円卓には、その席に座るべき騎士の名前が、金文字で浮かびあがったという。
円卓の騎士たちは、戦時にはアーサーの戦士として勇猛果敢に戦い、平時においては冒険や探索の旅に出かけ、また、自分自身や昌婦人の名誉のために馬上模試合などに挑んだ。
ところで、イグレインにはアーサーにとって異父姉に当たる3人の娘がいた。実は彼はそのことを知らず、即位して間もないころ、長姉モルコースと過ちを犯した。その結果、彼はモードレッドという息子を得たのである。
だが、末姉モルガンはアーサーを憎んでいた。
尼僧院で魔術を覚えた彼女は、策略で彼からエクス力リバーの鞘を奪い、湖に投げ捨ててしまった。
アーサーの不死性は失われたのである。
なお、後にモードレッドを含むモルコースの5人の恵子とモルガンのひとり息子も、円卓の騎士の一員となった。
アーサーを襲った最大の悲劇といえば、王妃クイネヴイアがもたらしたものだろう。彼女は円卓
の騎士のひとり、ランスロットを見初めたのだ。
ランスロットもそれに応え、ふたりはアーサーをさしおいて、誠の愛を誓い合った。
その一方、彼は魔術で王妃に化けたある国の王女と愛を交わし、息子ガラハッドをもうける。成長したその息子もまた、円卓の騎士に加わったのである。
その後、アーサーは騎士たちにある任務を与えた。イエス・キリストが最後の晩餐で手にしていたとされる聖杯の探索である。真に犠れのない者だけが発見できるという聖杯があれば、その国は神の祝福を受けるという。
騎士たちの大半が脱落した過酷な探索の旅の末、ガラハッドは聖杯を発見した。だが、最も積れない騎士として、天に召されてしまうのだ。
崩壊した円卓の騎士
あるとき、王妃とランスロットが密会している現場に、他の円卓の騎士たちが乗り込んできた。
ランスロットは脱出するが、その際にモルコースの恵子のアクラヴェインを殺し、モードレッドに重傷を負わせてしまう。そして王妃は反逆罪に問われ、火刑の判決が下った。
だが、ランスロットは刑執行の寸前、その救出に成功したのである。しかし、このときも彼は、モルコースの息子ガヘリスとガレスを殺してしまう。同じくモルゴースの恵子で、3人もの兄弟を殺されたガウェインは嘆き悲しみ、ランスロットに復讐することを誓う。
アーサーはガウェインとともに、ランスロットの居城を大軍で包囲した。激しい戦いで多くの戦士たちが命を落とした。ところが、この戦いは突如、中断された。アーサー不在の間の国の管理と、ランスロットから返された王妃の世話を任せていたモードレッドが反乱を起こしたのである。しかもモードレッドと王妃は結婚したという。裏切られてもなお王妃を愛していたアーサーには、非常な衝撃であった。
自国にとって返したアーサーと息子との戦いが始まった。この戦いでガウェインが命を落としてしまう。ある晩、眠りに就いていたアーサーの夢にガウェインが現れ、次のように告げた。
「敵に和睦を申し入れて戦いを中断し、ランスロットの援軍をお待ちください」
だが和睦は失敗し、最後の戦いが始まった。
一騎打ちの末、アーサーはモードレッドを倒すが、自身も瀕死の重傷を負う。アーサーは側近とともに、かつて新たなエクスカリバーを得た湖に向かった。そこでは3人の乙女を乗せた1駿の小舟がアーサーを待っていた。アーサーは側近に次のようにいい残し、小舟に乗った。
「私はアヴァロンに傷を癒しにいく」
小舟はやがて湖の彼方へと去っていった。
イギリスのどこかにあるといわれる伝説の島ヴァロン。アーサーは今なお、この島で傷を癒しているのだろうか?